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第9回緑の回廊講演会報告書
2007.02.25
2月25日(日)に「魚から学ぶ川の仕組み」と題して、八雲町在住の動物写真家稗田一俊氏の講演会が南区民センターにて行われました。参加者は56名で、狭い会場は満席となりました。

『サケの産卵行動は川の仕組みをたくみに利用しているので、サケは川の仕組みを教えてくれる』と始まりました。「サケの産卵」の様子をDVDで見た後、1つ1つの行動について詳しく解説いただき、産卵には湧水、卵をいれる石、石と石の間のすき間が必要なことを学びました。また、サケの卵の膜は、川に放出され水に触れると硬くなり保護膜となるが、孵化する前は膜を解かす物質が出て柔らかくなること、生まれたばかりの稚魚は石に寄り添いじっとしているので石の存在が大切なことなど、「サケの卵の不思議」を知りました。育った稚魚はやがて銀色に体の仕組みを変え、海に下り3年の回遊生活を終え、海の栄養を蓄えて30倍の大きさになって戻ってきて産卵をし、一生を終えた後もなお、他の動植物の栄養となり、栄養を循環させ命をつないでいる「サケの役割」を学び、自然界の営みの大切さを知りました。また、サケは生まれた川に戻る習性があり、「川固有のサケ」が存在するが、捕獲場で捕獲され他の孵化場に持っていかれると、時期・場所を違えて戻ってくるべきサケが単一化される。川(支流)固有のサケ=原種(よりすぐりのサケ)を保全することこそが漁業の資源が安定につながり、他の動植物への栄養循環から考えても、自然産卵が必要なことを訴えていました。その後、「いろいろな魚たちの産卵」行動をビデオで紹介いただき、ハナカジカやヤツメウナギ等の不思議な産卵の仕方を見ました。泥が発生していなくなるのは、きれいに磨かれた石に卵を産み付ける習性のあるハナカジカと知りました。

 後半は、きれいな川なのに魚がいなくなった川の上流にはダムがあることがわかり、「生命を育む川の仕組みがこわれる」メカニズムを図解でわかりやすく説明していただきました。ダムがあると川の流れの仕組みを変え、ダムの下流で砂利が流されたまま供給されないため川底が下がり傾斜がきつくなると川岸が崩れ、それを食い止めるための新たなダムを作ることになります。もう1つの問題点として、ダムでは流れが緩やかなため泥がたまり、それが大雨の時に下流に流されると、川底に泥が沈むため、魚の卵は窒息して死んでしまいます。魚の卵は川底の石の間できれいな湧水にさらされて育つのです。

本来の川は苔むした石があって安定しているが、上流にダムがあるために、どんどん貴重な自然が壊されていくメカニズムを穏やかな口調で論理的にお話いただき、とてもわかりやすく説得力のある講演でした。また自然の観察を通して学ぶことの大切さを教わりました。産卵シーン等の感動的な映像をありがとうございました。


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